シンポジウムで基調報告をおこないました(1)

今年度の日弁連人権擁護大会が、10月6日に滋賀県大津市で開かれ、「犯罪被害者の誰もが等しく充実した支援を受けられる社会の実現を目指す決議」が採択されました。
https://www.nichibenren.or.jp/activity/document/civil_liberties/year/2017/2017_1.html
そして、これに先がけて5日に開かれたシンポジウムにおいて、私は第1部の基調報告をおこない、犯罪被害者支援のこれまでの歩みと今後の課題について報告しました。

2000年には、いわゆる犯罪被害者保護二法が成立し、少年法も改正されて、新たな制度が新設されました。例えば、証人として出廷する場合の負担軽減措置、意見陳述制度、被害者の優先傍聴、記録の閲覧謄写、刑事和解制度などが新設されました。少年事件においても、記録の閲覧謄写や、意見聴取制度、審判結果通知制度などが新設されました。
このように、犯罪被害者の地位に一定の向上はありましたが、「被害者の権利」が確立されたとは言えず、その後も被害者の権利確立を求めて様々な活動がなされました。

そして2004年12月に犯罪被害者等基本法が成立し、同法には被害者に「権利」があることが明記され、この基本法に基づいて犯罪被害者に対する支援制度がそれまで以上に整備されるようになってきました。
2005年に閣議決定された犯罪被害者等基本計画下においては活発な議論がなされ、2007年に被害者参加制度と損害賠償命令制度が創設されました。いずれの制度も、2008年12月に施行されています。また、2008年6月には少年法も改正され、事案によっては被害者が少年審判を傍聴することが可能になったほか、審判状況説明制度が新設され、記録の閲覧謄写をできる範囲が拡大されたり、意見聴取対象者が拡大されたりしました。

その後、2011年に第二次基本計画が、2016年に第三次基本計画が閣議決定され、被害者支援施策をより良くするための法改正や運用改善などがなされているものの、第一次基本計画下におけるそれと異なり、犯罪被害者支援施策の推進に停滞が見られると言わざるを得ません。
ではなぜ支援施策の推進に停滞が見られるのか。今回のシンポジウムでは、基本法で謳われた被害者の「権利」が本当に確立されたと言えるのか、被害者が単なる保護の客体ではなく国家等の対応を求めていく主体であるということをまずは再確認し、被害者が権利の主体であるということを、今後の施策推進の柱とすべきであると報告しました。

以前に比べれば被害者支援施策は前進したとはいえ、まだまだ課題は山積しています。
その課題について、被害者の方々にビデオインタビューを行い、生の声をご来場いただいた方々に聞いていただきました。
長くなりましたので、「課題」につきましては後日改めて(2)としてお伝えしたいと思います。



 ↑ 滋賀弁護士会のゆるキャラ「ナヤマズン」です。

(弁護士 天野康代)

2017.10.22