止まった時間、見えない怖さ

私は福島原発被害者支援かながわ弁護団員として活動していますが、
先日、訴訟準備の一環として現地調査へ行ってきました。

福島県では、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、南相馬市、田村市に立ち寄りました。
それぞれの場所で、被害者の方々の話を聞いたり、
家屋の中に入って空き巣や小動物に荒らされている様子を見てきました。
中には、明らかに大きな獣に荒らされたと思われるところもありました。

居住制限区域は特別な許可がなくても日中の立ち入りができますが、
見かけたのは除染作業をしている方々くらいでした。
スポーツが盛んだったと思われる高校の校門には、
色々な運動部が全国大会などで活躍したことを祝う看板がたてられていましたが、
全て「平成22年度」となっていて、時間が止まったままであることを実感し、
切ない気持ちになりました。
あちこちに積まれている、放射性廃棄物の入ったフレコンバックの山々は本当に異様な光景でした。

帰還困難区域は立ち入りが制限されていますので、スクリーニング場で手続きをしてから入ります。
誰もいない町。音もしない町。
地震で倒壊した家屋が、4年以上前の姿のままであちこちに存在しています。

今回の現地調査では、避難指示解除準備区域、居住制限区域、帰還困難区域の
それぞれに該当する場所に立ち寄りましたが、このような区域割りには合理性がないように思いました。
放射線は目に見えません。空気と同じです。
例えば、ある場所で規制線がはられ、その線から右は帰還困難区域、左は居住制限区域、
と分けられているわけですが、本当にその線で明確に分けられるのでしょうか。
見えないということがいかに怖いか、改めて感じました。

(弁護士天野康代)


2015.08.16