おかしくないですか?

 今年の8月1日から、改正介護保険法が施行される予定です。

 今回の改正点は、一定以上の所得のある利用者の自己負担の引き上げや、補足給付の支給に資産等を勘案することであり、その趣旨は、保険料上昇を抑えるため、所得や資産のある人の利用者負担を見直して費用負担の公平化を図るという点にあります。

 さて、私は現在、福島原発被害者支援かながわ弁護団の一員として活動しています。

 私が担当している被害者の方の中には高齢の方もおり、今回の改正により自己負担が大きくなってしまいます。というのも、既に東電から慰謝料や財物損害(自宅不動産や家財)についてそれなりの賠償を受けていて、改正後の基準額を上回ってしまうからです。

 しかし、おかしくないでしょうか?

 今回の改正では、家財や不動産については資産勘案の対象外となっており、原発事故さえなければ、改正前と同じ条件で福祉サービスを受けることができていたはずなのです。
 ところが、原発事故により避難生活を余儀なくされ、自ら望んで自宅や家財等を手放して金銭を得たわけではないのに、慰謝料や財物損害の賠償金が流動資産と認定されてしまうのです。

 原発事故がなければ、辛い思いもせず、自宅や家財があっても、1割負担で福祉サービスを受けることができたのに、辛い思いをして、自宅にも帰れず家財も殆ど持ち出せず、その賠償を受けたら今度は流動資産があるからといって自己負担が大きくなる・・・どう考えてもおかしいと思います。
 
 何かできないか、現在、思案を巡らせているところです。

(弁護士 天野康代)


2015.07.16