どこでもよいので相談を!

先日、介護用ロボットの購入を持ちかけられて申込みをした方が、インサイダー取引にあたるからどうこうと言われて、解決金名目でお金をとられてしまったという報道に接しました。
その内容があまりにメチャクチャすぎてよく分からなかったのですが、要は、「インサイダー取引」という言葉を巧みに利用して被害者の不安感をあおり、大金を支払ってでも何とかしなければならないという気にさせて現金を詐取した、ということなのでしょう。

報道を聞く限りではインサイダーでもなんでもないのですが、もし、自分が犯罪者だと言われたら、まずは弁護士に相談してください。
おそらく、「それは振り込め詐欺の一種ですね。」で終わると思います。
仮に、本当に犯罪を構成する場合には、なぜそのような事態になってしまったのかお話をよく聞いて、一緒に警察署へ行って説明するということになろうかと思います。

この報道に接し、思い出したことがありました。
7年ほど前だったでしょうか。ある日、事務所の電話が鳴りました。
高齢と思われる女性から、「息子が警察に捕まってしまったので弁護をお願いしたい。」という刑事弁護の依頼でした。
そこで私は、「どこの警察署から電話がありましたか?」と聞いたのですが、その女性は「分からない。」というのです。
本当に警察からの電話だとしたら、「○○警察署」と必ず伝えるはずなのにおかしいと思い、「息子さんに電話してみましたか?」と尋ねると、「今は警察だからつながらない。」と言います。
私は、息子さんに面会しようにもどこの警察署にいるのか分からないのでは行けないので、一度電話をしてみるから息子さんの電話番号を教えてほしいと説得して、教えてもらった番号にかけてみました。
すると、息子さんが電話に出たではありませんか。
むしろ私が怪しまれてしまったので、事情を説明して、お母様が心配しているので電話を掛けてあげてくださいとお伝えしました。
そして10分くらい経った後、女性から「息子と話すことができました。」とお電話をいただきました。私は、詐欺だから気をつけるようにとお話しして電話を切りました。

息子が警察に捕まったから弁護士に相談。
これは非常に自然な行動です。刑事弁護ができるのは弁護士しかいないのですから。
この当たり前の行動によって、女性は振り込め詐欺を未然に防ぐことができたのです。

また、電車やタクシーの中に現金や小切手を忘れた、という電話がかかってきたら、まずは鉄道会社やタクシー会社に問い合わせてみてください。
乗っていた電車が分からないなんてことはないはずです。
タクシー会社はもしかすると分からないかもしれませんが、その場合は警察です。
日本は、財布を落としても、多くの場合、中身が入ったまま手元に戻ってくる国です。
もし振り込め詐欺だったら、その段階でもう電話がかかってこなくなると思います。

とにかく、電話でよく分からないことを言われたら、どこでも良いので相談してみてくださいね。

(弁護士天野康代)

2015.02.13